ガラスの向こうのふたりを見ても、特別変わった様子はなくて。
私を指差して、何やら話しているけど、この中にいるせいかふたりの声は聞こえない。
狭い部屋の中を見回してみても、何があるとも思えないし。
「ねぇ、もう良いでしょ? ここ、ちょっと臭いんだけど」
普通に話しても、廊下のふたりには聞こえていないようで、私を無視して話を続けている。
あー、聞こえないか。
何もないなら、私も廊下に戻ろう。
指示をされていないけど、マネキンを元の位置に戻して部屋を出た。
家政学室を通り、廊下に出た私が見たものは……変わらずショーウインドーを見上げているふたり。
「何か分かった? あの中、臭くてさ……」
そう言いながら近付くと……ふたりは何だか驚いたような表情で。
何に驚いているのか、ショーウインドーに視線を向けると。
元に戻したと思っていたマネキンの胴が、横を向いて立っていたのだ。
あらら。戻す時に向きを間違えたか。
「柊さん、見て」
言われなくても分かってるよ。
別にそれくらいの事で文句を言わなくても良いじゃない。