「このバカが、蹴りさえしなけりゃね」
「な、何だよ!! ……悪かったよ」
私がにらむと、龍平はバツが悪そうに謝る。
「まあ、今さら言っても仕方ないよ。きっとこれは、私達の運命だったんだよ」
死ぬ運命を前にした美雪が、私をなだめるようにそう言った。
「最後……か。皆、覚悟はできたか?」
「何で健司が仕切ってんのよ! あんたはまだ、カラダを見つけなきゃならないでしょ!」
「あ、じゃあ私が仕切ろうかな?」
あゆみまで!
誰が仕切ってもかまわないけどさ、どうするのよ、このぬいぐるみ。
「最後なんだから……皆でいっせいに触って、赤い人に殺されよう!」
殺されるってのに……ずいぶん明るく提案するもんだ。
だけど、あゆみの言葉に誰も反論はなくて。
私もうなずいて、合図を待った。
「いくよ……せーのっ!」
あゆみの合図で、私達は同時にぬいぐるみに手を伸ばす。
思い起こせば本当にいろいろあったな。
美紗に「死ぬ」って言われて、カラダ探しなんてさせられて。
健司と対立したり、美雪と喧嘩したり……龍平を怒ったり。
あゆみが監禁されて、助け出せたのは今日の事。