「あっ! 最後の唐揚げ! 龍平、昼にあげたんだから私に譲りなさいよ!」
「か、関係あるかよ! 早いもの勝ちだろ!?」
「ふたりとも、そんな事で喧嘩しないでよ。ほら、まだエビフライもあるし……」
「あゆみは知らないんだよ! こいつ、私の唐揚げを半分も食べたんだからね!」
「し、知らないよ……そんなの」
……笑顔が多いのは、こんなバカみたいなやり取りが多かったからかもしれない。
私達は、この最後の時を時間を忘れて楽しんだ。
皆との別れはもうそこまで迫っていると知りながら。
高校を卒業する時も、こんな感じなのかなと……時々考えて。
赤い人が現れる21時まで……残り時間は少なかった。
そして、その時は唐突に訪れた。
私達が囲む、食べ残した料理の上。
いつの間にか置かれていたうさぎのぬいぐるみが、盛り上がっていた私達の会話をピタリと止めたのだ。
「……思えば、龍平がこのぬいぐるみを蹴ってから、カラダ探しが始まったんだね」
ボソッと呟いた美雪に、私は小さくうなずいた。