誰に向かって話しているのか。


美紗は壁に向かって手を伸ばして話し始めた。


ヤバい。


いよいよおかしくなっちゃったのかな。


「み、美紗。誰に話してんのよ。大丈夫だって、早く食べよう……」


と、私がそこまで言った時だった。


部屋の照明がつき、ほこりまみれの汚い部屋が、光に溢れるきれいな部屋に変化したのは。


いつもの美紗の部屋……。


不思議な現象に、私だけじゃなく、皆も驚いて部屋の中を見回していたけど……。


美紗は笑顔を浮かべて小さく呟いた。











「ありがとう」













きれいな部屋で食事が始まり、私達は最後の夜を、カラダ探しが始まって以来、初めて全員そろって楽しんでいた。


美紗が言うには、この家が、主である美紗のために在りし日の姿に戻したらしい。


前にも聞いたような気がするけど……良く分からないからどうでも良い。


今日は美紗の笑顔が多くて、まるで別人のようだったけど、それは私達に心を開いてくれた証拠なんだろう。