ふたりが放った左のパンチがお互いの顔面をとらえ、仰け反った次の瞬間。
強く地面を踏みしめて、ふたりが同じように右の正拳突きを放ったのだ。
私からは同時に殴り合ったように見える。
それを食らって、弾かれるように倒れるふたり。
どちらも限界だったのだろう。
受け身も取れずに、地面に崩れ落ちたのだ。
龍平が……本気の武司さんに勝った?
いや、ふたりとも倒れたから……引き分けなのかな。
「りゅ、龍平!」
倒れた龍平に駆け寄り、その肩に触れようとした時、にらみつけるような視線を私に向け、口を開いた。
「邪魔すんな……まだ終わってねぇっ!!」
な、何でよ……ふたりが倒れて、もう終わったんじゃないの?
そう思うものの、私は言われた通りに龍平には触れず、何をしようとしているのかを見守る事しかできない。
地面に手を突き、フラフラになりながらも上体を起こして、ゆっくりと立ち上がる。
そして、武司さんの前まで何とか歩いた龍平が取った行動は……。
ビシッと、きれいに手を上げてのピースサイン。
は? なにそれ。
せっかくの感動が、何かいろいろぶち壊しなんですけど。
でも、そのポーズの意味を武司さんは分かっているらしくて。