「はぁ? あんた何勘違いしてんの? 赤い人が来てて、どうしようもなかったからしがみついただけで、あんたを抱きしめたつもりなんてないんだけど」
肩に置かれた手を叩いて、私は龍平をにらみつけた。
その行動に、何が何だか分からないと言った様子でとまどう龍平から、私はすぐに視線をそらした。
「そりゃないぜ! あんなに良い雰囲気だったのに。ほら、手も握ったろ!?」
何を言っても、しつこく昨日の事を言ってくる龍平にうんざりして教室を出た私は、逃げるように屋上に向かった。
だけど、龍平も私の後を追いかけて来て、屋上にまで一緒にやって来たのだ。
「もう! しつこいっての! 何なのよあんたは! 私が何をしようと、あんたの事なんて何とも思ってないの! 勘違いしないでよね!」
入り口をふさぐように立っている龍平を指差して、私はとにかく言葉を並べた。
良いも悪いも関係なく、ただ口から出る言葉を闇雲に。
その結果、龍平がどう思おうと知った事じゃない。
「いや、だってよ……俺はお前を守りたくて、絶対に手を放さないって決めて……留美子が好きだから……」
そう言われた時、私の胸はまた苦しくなって、とても悲しかった。