薄汚れたうさぎのぬいぐるみは、私の顔をジッと見つめているようで何だか不気味。


そんなぬいぐるみに触れもせずに、同じ部屋にいるのだから、気が変になってしまいそうだ。


「ちょ、ちょっと! こっちを見ないでよ! 気持ち悪い……」


この空気に耐えかねて、部屋から逃げようとドアに向かった時だった。










キンッ……キンキンッ……。












室内を明るく照らしていた照明が点滅して、一転部屋は真っ暗に。


昨日と同じだ……ここにいたら、赤い人が来ちゃう!


暗闇の中、ドアノブをつかんで回すけど、それは空回り。


ドアが開く事はなく、私の背後に何かが動いているような気配を感じた。


「う……嘘……やめてよ……」


恐怖に包まれて、ゆっくりと振り返った私が見たモノは……。


闇の中を歩いて来る、うさぎのぬいぐるみの姿だった。


音もなく歩いて来るぬいぐるみに、私はどうすれば良いのかが分からなくて、開かないドアの前に座り込んだ。


ただでさえ理解できない状況の中で、ぬいぐるみが動いているのだから、訳が分からない。