もう大丈夫だと安心しきって、急いで階段を駆け下りたのがまずかったのか……その足音が、生産棟にいる赤い人に聞こえたのだろう。


廊下を横滑りしながら現れた赤い人の姿に、私達は絶望しか感じなかった。


「止まるな! 行けっ!!」


その中で、声を上げたのは龍平。


今日のカラダ探しが始まってから、ずっとつないでいた私と龍平の手。


それがスルリと外れて……思わず私は、龍平の手をつかもうとしたけど……。


すでに龍平は、赤い人に飛びかかっていて、私からは遠く離れた場所にいた。


「アハハッ! お兄ちゃん……遊ぼう!」


「やってみろやオラァァァッ!!」


誘導灯の光に照らされて、不気味に浮かび上がる赤い人の顔。


その視線は龍平に向けられているけど……私達にも伝わってくる殺意。


子供の純粋な気持ちが、そのまま全部殺意になっているようで。


蛇ににらまれた蛙と言うべきか、ひざが震えて脚が前に出ない。


「留美子!! ほら、しっかりしてよっ!」