だけど、あゆみの手は届かなくて。


あと少しという所で、スカスカと空を切った。


「ダメ……柵の向こう側に行かなきゃ触れない」


脚で触れられないかと、柵の間に入れてみるけど……太股で引っかかって、それに触れる事はできなかった。


結局、あゆみが柵を乗り越える事になり、美雪がその手をつかむ。


「み、美雪、離さないでよ!? 絶対に離しちゃダメだよ!?」


高所恐怖症のあゆみにとって、これはきついんだろうなあ。


柵の内側では見せなかったあせりが、その表情に現れている。


「分かってる、分かってるからさ。早く回収して生徒玄関に行こうよ。ね?」


美雪に励まされて、恐る恐る屈んだあゆみ。


ゆっくりと手を伸ばし、カラダに触れて……光が溢れた。


屋上の縁にあったあゆみの腰は消えて、身体の中に戻ったのだろう。


美雪に抱えられるようにして柵の内側に戻り、地面にペタンと腰を下ろし、ジワッと額に浮かんだ汗を袖で拭う。


あゆみにしてみれば、大冒険だったに違いない。


「立てるか? ほら、つかまれよ」