私が示した方に移動していると、遠くからでもそれは良く分かる。
月明かりに照らされて、柵の向こうに浮かび上がる制服のスカート。
風でヒラヒラと揺れていて、体育館から見えた動く物の正体はこれだったのかと理解した。
「あゆみ! 最後のひとつだよ!」
うれしそうに美雪が指差すと、暗かったあゆみの表情も少し明るくなって。
ようやく、かすかな笑みを浮かべたのだ。
「やっと笑ったね。あんた、全然笑わないから心配してたんだよ? 武司さんの事は気にするなって言ってんのにさ」
「だ、だって……」
あー、余計な事言っちゃったかな。
せっかく笑ったのに、また悲しそうな表情だよ。
「とにかくよ、カラダを回収するのが先決だろ。話してる間も、赤い人は動いてんだぞ?」
龍平にそんな事を言われると、なんか調子が狂うんだよな。
目の前にあゆみの腰があるってのに、いつものような変態じみた行動を取らないから。
そんな事を考えていると、お約束のように吹いた強い風で、私達のスカートがふわりとめくれ上がる。