「何も聞こえねぇな。どうなってんだ?」


「私に聞かれても……龍平と一緒にいたんだから、分かるはずないでしょ」


「それもそうだな。行くか」


それでも、赤い人が発する声や足音に注意しながら、一段一段確かめるように階段を踏みしめる。


階段を上っている最中に赤い人に遭遇したら、振り返る事もできなくなって、逃げようがなくなるからね。


踊り場を通り過ぎ、残り数段という所まで上って顔を上げてみると……。














二階の廊下、階段の前に……誰かが立っているような影が見えたのだ。







「ひっ!!」








突然目に飛び込んだ黒い影に、私は小さな悲鳴を上げた。


階段で見つかりたくないって思ってたのに、どうして見つかるのよ!


グッと龍平の手を引いて、慌てて後退しようとするけど龍平は動かない。


赤い人を前に固まってしまったのかな。


黒い影が、こちらに向かって歩いてくる!


「龍平! 逃げてよっ!」


ギュッと手を握って、龍平の腕にしがみ付いた。