しゃべっても大丈夫だと判断したのだろう。


私の耳に顔を近付けてささやいた。


しゃべろうとしても、あんたの手が口をふさいでるから、しゃべれないでしょ。


「ぷはっ! ここに入って来なかったなら、美雪達の所に行ったんだろうね」


龍平の手を剥がして、天井を見上げた私は、ふたりが無事でありますようにと祈る事しかできなかった。


美紗ならともかく、私達が行っても助けられるとは思えないし。


「トイレを調べるか……赤い人がいないなら、今がチャンスだろ」


そう言ってドアを開けた龍平は、私を立たせて廊下に出た。


廊下を歩き、トイレに到着した私達は、すぐに中に入ってカラダを探した。


女子トイレ、男子トイレと隅々まで調べたけど、カラダはなくて。


再び廊下に出た私達は、階段の下で耳を澄ました。


赤い人が近くにいたら、笑い声や歌声、話し声でそれが分かるはずだから。


美雪達が赤い人に見つかって、殺されていたとしても、私達には龍平の右腕を回収するという目的がある。


……私がもっと早くに気付いていれば、龍平はとっくにカラダを全部回収していたのかな。


そう思うと、何だか悪いような気がして、今はこの手を振りほどく事ができないでいる。