「それが難しいから聞いてるのによ。じゃあ、文句言うなよ」
そう言って、ゆっくりとドアを開けた龍平。
あ、行くんだ。
こういう時の攻めの姿勢は性格が出ているな。
どうせ待機だろうと思って気を抜いていた私は慌てて、廊下に飛び出す準備をした。
「よし、行くぞ」
グッと手を握り、廊下に飛び出そうとした時。
「あ~かい ふ~くをくださいな~」
あの歌が聞こえた。
「ストップストーップ! 来てる来てる!」
廊下に出ようとする龍平の手を引っ張り、ゆっくりと音を立てないようにドアを閉めた。
「あ、危ねぇな……クソッ! また待機かよ」
待機か……ま、また龍平に抱かれるのかな。
私が動かないように押さえてくれてるんだから、仕方ないんだけど。
それでも恥ずかしいし、恐怖でなのか、抱かれてなのか分からないドキドキがある。
「し~ろい ふ~くもあかくする~」
そんな事を考えている暇なんてない。
赤い人はゆっくりとこちらに近付いて来ていて、早く隠れないと見つかってしまうかもしれないのに、龍平は動かない。



