歌声と共に聞こえ始めた、ペタペタという足音。
行く場所なら西棟だってあるのに、どうして私達がいる方にやって来るの?
ギュッと龍平の手を握ると、「大丈夫だ」と言わんばかりに握り返してくれて。
恐怖はあるけど、落ち着いていられた。
「し~ろい ふ~くもあかくする~」
赤い人は、どの部屋にも入ろうとはしていないようで、こちらに向かって廊下を歩いている。
ここにいる事が分かってるのかな。
どうもそんな気がしてならない。
「まっかにまっかにそめあげて~」
校長室の前は通過したかな。
声が近付くにつれ、私の口をふさぐ龍平の手に力が入る。
やっぱり怖いんだろうな。
背中にピタリと寄せた龍平の身体から、ドクンドクンと心臓の音が伝わって来るのが分かる。
「お顔もお手てもまっかっか~」
ついに、声がこの部屋の前に差しかかった。
私も龍平も、お互いの手を握る力が強くなって……入って来るなと、目を閉じて祈った。