こればかりは運の問題とはいえ、こんなに近い場所に現れなくても良いのに。


つい数秒前までは余裕があったのに、すぐそこに赤い人がいるというだけで一気に緊張感が増す。


そんな私の不安を感じ取ったのか、軽く私の手を引き、窓際まで移動する龍平。


そして、私をクルリと時計回りに回転させて、その場に座らせたのだ。


「えっ? えっ?」


窓際の壁に龍平が腰を下ろし、私はその上に。


何がどうなっているのか分からないまま……龍平に抱かれるようにして。


「しっ! しゃべるな。携帯を隠せ!」


後ろから回された手で口をふさがれる。


赤い人がいるからって、何で私が龍平とこんなに密着しなきゃならないのよ!










……なんて考えても、赤い人に殺されるよりはマシだ。


手をつないだままで、よくこんな事ができるもんだと感心するよ。








「あ~かい ふ~くをくださいな~」











ドキドキしている私の耳に、かすかにその声が聞こえた。


少しずつ大きくなっているその声は、確実にこちらに近付いて来ている。