まあ、私が勝手に追いかけたんだけどね。
「……あれは喧嘩じゃねぇよ。俺と武司さんとの真剣勝負だ」
「どっちでも良いけどさ、それで殺されるんだよ? もう止めときなって」
話している間も、龍平は調べる手を休めずに、キャビネットや机を次々と調べて行く。
「そうはいかねぇよ。だってよ、もう明日しかねぇんだぞ? 本気の武司さんに勝つチャンスは」
そこまで言われると、私には分からない話かな。
勝つとか勝たないとか、そんな考えで何かをした事なんてないから。
龍平にとって武司さんの存在は大きくて、乗り越えなきゃならない壁ってやつなのかな?
まさかここまで熱い男だとは思わなかったな。
普段の龍平は、女の子にモテようと必死な、どこにでもいるバカな高校生なのに。
「じゃあさ、高広さんはどうなのよ? あの人は武司さんより強いんじゃないの?」
武司さんが壁なら、高広さんだって壁のはずだけど、龍平には高広さんと勝負しようなんて気がないように思える。
まあ、尊敬していたら、戦おうなんて気も起こらないのかな?