武司さんに殴られて、すがるようにつかんだこいつの手に、安心感を覚えたのは確かだし。


ゆっくりとその場に立ち上がり、フウッと溜め息を吐いた龍平は、私の手を引いて生徒玄関に向かって歩き始めた。


「な、何なのよいきなり! 分かったから放してよね!」


こんな所を見られたら、何て言われるか。


誰と噂になっても良いけど、龍平とだけは噂されたくないから、それだけは勘弁して!


「俺は、お前を守れなかった。手を握られたのに、握り返してやれなかった。マジで情けねぇぜ」


「分かった分かった、もう良いからさ、手を放してっての!」


私がいくら言っても、龍平は手を放してくれなかった。


あの時の事を、龍平は覚えていたんだ。


私が手を握った事、武司さんに殺された事。


悔しがってたのは、私が殺された事もあるのかな?


カラダ探しを始める前は、ひょうきんでバカなやつとしか思えなかったけど、今の龍平の背中は大きく見えた。


校舎の中に入り、向かったのは東棟一階の階段の隣にある部屋。


今は使われていない、宿直室と書かれたプレートが掲げられた倉庫。


中に入ると、トイレットペーパーや新品のホウキなんかがある。