元の世界でも生きている、私や健司が必死になるなら分かるけど。
昨日の夜に龍平は、好きな人がいない世界なんて嫌だ……とか言ってたけど、それは誰かを犠牲にしたくないって理由であって、元の世界に戻そうとしている理由じゃないんだよね。
私の頭上で、美紗と美雪が真面目な顔で話をしている。
その話は、赤い人のカラダがどこにあるのか、夢が何かを伝えているのかという内容だったけど、結論は出ないようだった。
夢で分かるんだったら、もっと直接的な夢を見させてよね。
ここにあるぞー!的な。
「……留美子! ちょっと、聞いてる?」
私の顔をのぞき込んで、美雪が私の肩を揺すりながら尋ねた。
「へ? あー、何? 今ちょっと考え事してた」
「もう! 龍平がいなくなってから変だよ? ボーッとしてさ」
「いやいや、それは言い過ぎっしょ。龍平がいてもいなくても、私は変わらないって」
なんて言ってみるけど、たぶんそうじゃない。
龍平が武司さんの所に行かなければ、私はこんな風に考える事はなかったかな。