「ああっ! クソッ! 腹が立つ!」


龍平がかかとで柵を蹴り、ガンッ!という音を立てたのだ。


何に腹を立てているのか。


龍平の視線は、誰に向けられているわけでもなく、ただ足元を向いていた。


「いきなり何よ……何が腹立つっての?」


龍平の機嫌が悪くなったのは、武司さんがなぜ負けたのか分からないと言われてから。


どういうつもりでも、勝てたんだからそれで良いじゃない。


何を怒ってるんだろ。


「だってそうだろ! 俺は本気でやったのに、武司さんは手を抜いてたって事だろ! それに……あゆみを監禁だぁ!? 腹立つどころかムカつくぜ!」


……いや、同じ意味じゃない?


「池崎君、まさか袴田さんの家に行こうなんて考えてはいないわよね? 昨夜、殺された事を忘れたの?」


「殺されても! カラダ探しで生き返るんだろ! バカにされたままで……終わってたまるかよ!」


目の前に立った美紗を、邪魔だと言わんばかりに押しのけて校舎の中に入った龍平。


「ちょ、ちょっと! 龍平! ねぇ、美紗! 止めなくても良いの!?」


慌てているのは私だけみたいで、美紗も美雪も、何事もなかったかのように涼しい顔。