「どっちでも良いよ。言葉で何が変わるってわけでもないし」


ブラウスを着て、スカートをはいて。


ブレザーに袖を通して準備完了。


「じゃあ、顔を洗ったら呼びに来てくれるかしら? それまで私はここで寝てるわ」


……さっき、一階に行った時に洗顔しておけば良かった。


歯磨きもしてないのに、パンを食べちゃったよ。


ま、良いけどね。


そうして、美紗に言われるままに洗面所に向かい、歯磨きと洗顔を終わらせて二階に戻った私は、美紗を起こして家を出た。


外に出ると、いつもと変わらない光景が広がっている。


朝日を浴びて、眩しく光る向かいの家の壁、青い空。


そしてヒビ割れ。


心なしか、昨日より亀裂が大きくなっているような気がする。


「あー……やっぱり朝は良いよね。ここが武司さん意識の中でも、これだけは関係ないかな」


清々しい空気を肺いっぱいに吸い込んで、鼻からスーっと抜く。


「早く行くわよ。袴田君だけじゃなくて、道端にいる人達にも気を付けなさい」