「飛び下りる!」


やっぱりそうだった!


単純なこいつが考えそうな事だけど、ここまで来たらもう私は何も言えない。


追い付かれたら殺される。


そう感じているからこんな行動が取れるんだろうな。


慎重とはほど遠い勢いで支柱の上を走り、ボードを乗り越えると、リングの上に乗り、それをつかんで宙にぶら下がったのだ。


この間、私は五歩くらいしか移動していない。


人間って、追いつめられたら何でもできるんだなと、床に着地した龍平を見て感心した。


「お、お前ら! チクショウ!」


赤い人が、龍平を追って飛び下りて来る気配がない。


つまり、健司を追いかけているという事で、私と龍平は体育館から脱出する事ができそう。


「留美子! もっと速く!」


真っ先に入り口にたどり着いた龍平が、私に身振りを付けて呼びかける。


必死に手を伸ばして、龍平が伸ばした手をつかんで。


入り口のドアもそのままに、私は龍平に手を引かれて廊下に飛び出した。


東棟の廊下を駆け抜けて、階段を上がり生産棟に入る。


そしてそのまま家政学室の中に入って、ようやく龍平が止まった。