ペタ……。
ペタ……。
シンと静まり返った体育館の中に、赤い人の足音だけが聞こえて、一気に緊張感が増す。
この感覚だけは、どれだけ味わっても慣れない。
向こう側から、こちらに向かって歩き始める死の足音。
その一歩一歩が、私の命を削るように体育館の床を踏みしめる。
(どうするの!? このままだと見つかっちゃうよ!)
ステージの反対側にいるふたりに、口をパクパクさせて伝えようとするけど、さすがに気付いてもらえない。
まさかこんなタイミングで赤い人がやって来るなんて。
どこにいても移動すれば見つかってしまう体育館に、赤い人が入って来るなんて最悪じゃない。
こうなれば赤い人が入り口から離れたら、一か八か走って入り口に向かうか……。
いや、ダメだ。
そんなの、足音だけでも気付かれてしまう。
と、なると……誰かが囮になるか、赤い人がいなくなるまで待つしかない。
そう考えていた時だった。
「キャハハハハハハッ!」