「それだけかよ……たとえばほら、すげー力が湧いてきたとか、特殊能力が目覚めたとかよ!」


いったい何を期待してたんだか。


漫画やゲームじゃあるまいし、そんな都合の良い事が起こるわけないじゃない。


「そんなわけの分からない事を言ってないでさ、さっさと体育館に行くよ」


何のために私がカラダを回収するのを見たかったのか、理由が分かったよ。


3人で体育館に向かって歩き出して、事務室の前を通り過ぎて体育館に続く廊下。


カラダを全部回収したせいか、また妙な感覚。


ずいぶん昔に、高広さんと美雪と私で、同じようにここを歩いたような気がする。


元の世界がどんなだったかは分からないけど、その記憶があるんだろうな。


体育館の前まで歩いて、重い金属製のドアを開けた私達は、ひんやりとした空気の体育館の中に歩を進めた。


切り刻まれるような、赤い人に追われている時と同じ空気。


まるで、ここに赤い人がいるような不気味さが漂っていた。


「じゃあ、分かれて探すか。こんなに広いんだ、その方が効率が良いだろ?」