「いつからここの照明が消えたんだろ……ついてたよね?」


たぶん、ついてたような気がするんだけど……まあ良いか。


「早く開けろよ。そんな話はどうでも良いだろ」


「わ、分かってるっての! じゃあ……開けるからね」


せかされながら、私がショーケースに手を伸ばすと……予想外と言うか、予期していなかったと言うか。


私の手は、ガラスに当たる事なく、中に入って行ったのだ。


「あら? あららら……何か、手が入っちゃったんだけど」


奇妙な光景だった。


確かにここにはガラスがある。


なのに私の腕は、そんな物はないかのようにガラスをすり抜けていたのだから。


「お、おい! ふざけてないで開けろよ! お前、俺に回収させないつもりじゃないだろうな!?」


「そんな事言われても……だって、手が中に入って、ガラスに触れないんだもん」


健司に、その言葉通りにショーケースの中に入った手を動かして見せるけど、納得しないようで。


私ができるならと、同じように手を伸ばすけど……ショーケースは健司の手を拒んだのだ。