カラダ探し~第三夜~


そう思って、横を通り過ぎようとした時だった。


「留美子っ! 危ねぇっ!!」


「え?」


龍平がそう叫んで、私を突き飛ばして。


せっかく買ったお弁当を、地面に散乱させて倒れた私は、状況を飲み込めないまま起き上がって背後を見た。


「いたた……って、何すんのよ! お弁当が……」


そこまで言って、私は目の前の光景に言葉を失った。


光の中のふたりの影。


武司さんに支えられて、龍平が立っているようにも見えるけど……そうじゃない。


何かが、武司さんの右手に握られていて……そこから、ポタポタと地面に滴り落ちる液体。


透明感がなく、地面を赤く染めるそれが、血だと気付いた時。


ダラリと力なく、龍平が倒れたのだ。


「お、お兄ちゃん? 嘘だよね? な、何してるのよっ!」


私達を見下ろす武司さんの手に握られていたのは包丁で……それで龍平を襲った。


あゆみの言葉も届かない様子で、冷たい眼差しを私に向ける武司さん。


「あ……ああ……。龍平、何寝てるのよ。冗談でしょ? どうしてこんな事になるのよ……」