……いや、知らないよ。
そんな話、本人からは聞いた事ないし、誰も言ってくれなかったから。
「ねぇ、留美子は気付いた? 明日香さん達が帰ってすぐに、ヒビが増えた事に」
どうでも良い龍平の話が終わった所で、美雪が口を開いた。
確かにその時、妙な違和感があったけど……ヒビが増えてたの?
ヒビの大きさしか見てなかったから、そこまで細かい部分は気にしてなかったな。
「増えてたのかぁ。何か変な感じだったのは分かったんだけどね」
やっぱり美雪は細かい所に気付くよね。
ヒビが見えるのが私だけだったら、そうとも分からずにいた所だよ。
「ヒビが増えた……良い兆候とはお世辞にも言えないわね」
「そんなの言わなくたって分かるっての。でも、それで私達にどうしろっての? 何をしてヒビが増えたのかも分からないのにさ」
原因が分からないのに、手の打ちようなんてあるはずがない。
まさか、動かずに家でジッとしていろなんて言わないとは思うけどさ。
「注意する人は、伊勢君、森崎さん、浦西君、袴田君、二見さん、それと……八代先生かしらね」
それって……私の記憶の断片に出て来た人達じゃない。



