「小野山さん、このヒビ割れって直らないの? なんか違和感がすごいんだけど」


そんな中で一番最初に口を開いたのは美雪だった。


空や建物の壁に現れた、空間のヒビ。


美雪だけじゃなくて、私もそれは感じる。


いつも見慣れた世界が突然変わってしまったみたいで、居心地が悪いというか……。


「直らないわね。相島さんや柊さんの自分の意思が、この世界とのズレを生じさせてると考えれば良いわ。もちろん、私という存在も大きなズレなのよ」


「あー、つまり早く終わらせろって事? 美紗の話はさっぱり分からないけど」


後三日はこの世界が変わる事はないのか。


意思とかズレとか、私なんかが考えても仕方ないから考えないけど、美雪は分かってるんだろうな。


「なあ、あゆみ。武司さんも見送りに行くのか?」


「何よその言い方。お兄ちゃんがそんなに嫌なの!? 行くに決まってるでしょ。高広さんとお兄ちゃんは親友なんだから」


このふたりには、何の関係もない事なんだよなあ。


まあ、龍平が武司さんを苦手としてるのは知ってるし、何日か前も自分が頼んだハンバーガーを横取りされてたからな。