その姿を見て、家の中に逃げ込もうかと思ったけど……その顔を見たら、何かムカついたから。


私はその場に立ち上がり、拳を握りしめた。


「勘違いなわけないでしょ! まだ私をだませるとか思ってんの!?」


駆け寄って来る龍平に、怒りに任せて拳を振り上げる。


 「えっ!?」という表情に変わり、立ち止まった龍平の頬に、私の拳がめり込む。


バキッという乾いた音が辺りに響き渡って……。










「いったい!!」










私は手首を抑えて、その場にうずくまった。


「だ、大丈夫かよ……そんなフニャフニャなパンチ、手を痛めるに決まってんだろ。何かグニャッてなってたしな」


「うるさい! 裏切り者! アホッ!」


私の前で屈んで、心配そうに手を伸ばす。


でも私は、そんな龍平をにらみつけて手を振り払った。


「あんたなんか……健司と一緒に誰を犠牲にするか考えてれば良いでしょ! そんな事したってね、どうせ赤い人に殺されるんだから!」


「だから、勘違いだって言ってんだろ!? 少しは俺の話をだな……」