「それよりさ、朝起きて外に出たら、世界にヒビが入ってたっしょ? あれは何か変な感じがするよね」
この部屋の窓から外を見ても、そのヒビは見えない。
外では確かにあったヒビも、家の中にいるとそれを忘れてしまう。
「へ? 世界にヒビ? 留美子、何言ってんの?」
あゆみの言葉に、私は首を傾げた。
は? あゆみこそ何言ってんの?
あんな大きなヒビに気付かないとか、どれだけ鈍感なのよ?
「柊さん、袴田さんにヒビが見えないのは当然だわ。だって、袴田さんは……もともとこの世界の住人なんだから」
美雪と話していた美紗が、あゆみの言葉を聞いて反応した。
「えっ? えっ? この世界の住人って……皆そうじゃないの?」
「そうだとも言えるし、違うとも言えるわ。私は美紀の意識が、柊さんは元の世界の柊さんの意識が入っているから、完全にこの世界の住人というわけではないの。相島さんはどうかしらね? ヒビが見えたかしら?」
あゆみに向けていた視線を、再び美雪に向けて尋ねる。