「……柊さんがそんな夢を見て、世界にヒビが入ったという事は、とうとう気付き始めたみたいね」


どうにかしたいけど、今は動く事ができないといった様子で、美紗は不安そうな表情を浮かべた。


いつも自信満々で、私を小馬鹿にして見下しているような強気な表情じゃない。


こんな美紗は初めて見る。


「気付くって何によ? 私は何も知らないんだけど」


「柊さんじゃないわ。私の存在に気付き始めたのよ」


美紗の存在って……そんなの、いろんな人が知ってるじゃないの。


同級生はもちろん、高広さんや翔太さんも。


今さら誰に気付かれちゃダメだったのよ?


「何言ってるのか分からないんだけど。あんた、誰かから逃げてたわけ? そのわりに結構派手に動いてるよね?」


今までの行動を見ていると、何かに怯えてるとか、隠れてるとかいう様子はなかったけど。


「ええ……私は動くつもりはなかったけど、あなた達が動くから、私も動いてしまったのよ」


えーっ! 何よそれ!


気付かれたって、私達のせいって事?