そう考えながら、家政学室の前の廊下を通り過ぎ、東棟に続く廊下に入った時だった。
「キャハハハハハーッ!!」
背後から、キュキュッという音と共に、赤い人の声が聞こえた。
いやいやいや!
いくらなんでも速すぎるっての!
100メートルくらいある距離を、いったい何秒で来たのよ!
こんなの、私なんかが逃げられるわけないじゃない!
嘆いても、諦めても、そんな事は関係ないと言わんばかりに赤い人は追ってくる。
どうにかして逃げないと……と、階段の前に差しかかった時、私は階段の方にグイッと引き寄せられた。
誰かが私の腕をつかんでいたのだ。
「柊さん……私が止めるから……早く逃げなさい」
誰が私を……と思ったけど、その声で答えは出た。
「美紗!? あんた無事……じゃ……ないよね」
美紗はまだ死んでいない。
カラダ探しが終わっていないから、それは分かっていたけど……その姿は、赤い人から私達を守るために戦って、もう限界である事が目に見えて分かった。
頭から血を流し、制服も赤く染まっている。
そして何より、いつもの美紗とは違う、欠落した身体のパーツ。
左腕がなくて、腹部も貫かれたのであろう、小さな穴が開いていたのだ。