生産棟に入り、T字路で進路を確認して、西棟側に向かって歩を進める。
そう言えば、まだ赤い人と美紗は三階にいるのかな?
もしもそうなら、この廊下の窓際は気を付けなければならない。
生産棟の一階で赤い人に見つかってしまった経験があるから、こんな所でまた見つかるわけにはいかないのだ。
よし行くぞと、窓がある所まで歩いて、四つんばいで窓の下を進んだ。
トイレまでは近いけれど、その近い距離で見つかりたくないから。
気を付けて、やっとたどり着いた生産棟二階のトイレ。
私がそこに入ろうとした時……その声は聞こえたのだ。
「おい、留美子! ひとりで行くなよな!」
龍平が、トイレに入ろうとした私に声をかけてきたのだ。
「りゅ、龍平!? シッ! あんた大声出してんじゃないよ!」
右手の人差し指を口に当てて、今、私が通って来た道から歩いて来た龍平にそう呟いた。
「おっと、わりぃわりぃ」
反省してるのかしていないのか、ヘラヘラと笑いながら私に駆け寄る。