「あ、そうだ留美子」


美雪の声で呼び止められた私は、ちょっぴりうれしくなって、思わず振り返りそうになった。


危ない危ない……。


「大職員室を調べて、もしも留美子のカラダだったら、何か目印を残しておいてね」


……なんだ、一緒に行こうって話じゃないのか。


「分かった分かった。派手に目印付けとくから」


そう言って、皆を見る事なく手を振った私は教室を出た。


最近、ひとりだけでいる事が少なかったせいか、暗い廊下が物すごく不気味に思えて……。


近くにはいないであろう赤い人の陰に怯えてしまう。


まず私が向かうのは、生産棟二階のトイレ。


そこに、私のカラダがある事が分かっているから。


工業棟から、生産棟に続く廊下に入ると、ますますその不気味さが強くなる。


暗くて奥まで見えない廊下。


所々にある緑と赤い光が、かろうじて私の行く先を示してくれているけど、赤い人がどこからか飛び出して来そうで。


健司に負けまいと、必死にカラダを探していた時は感じなかった、殺意にも似たものが充満しているよう。


「やだなあ……暗いし怖いし。これからトイレとか、勘弁してよね」