緑の人が龍平で、危険がないのなら美雪に任せよう。
「あ、あゆみ、肩を貸して。安心したら腰が……」
と、半笑いで言った時。
美雪がスッと屈んで、私の腕を自分の肩に回して、起こしてくれたのだ。
「いやな、赤い人は匂いで俺達を見つけるだろ? だから何とか匂いを消そうと思って、棚にあった塗料を……」
「相変わらずバカなんだから。バカで口が悪くて自己中で……なのに、危ない時には人をかばおうとするんだもん。それで腰を抜すなんてさ」
龍平の話を途中でさえぎるように、美雪が話し始めた。
それって……私、ほめられてんの?
バカって言ったよね? バカで口が悪くて自己中とまで。
……確かにそうかもね。
「で、塗料をかぶって隠れたら、赤い人は俺を見つけられなかったんだぜ?」
龍平が自慢気に話しているけれど、そんなのはどうでも良い。
「悪かったね、美雪みたいに利口じゃなくて。口が悪くて嫌な気分にするかもしれないけど、それが私だもん。我慢してよね」
なんか、こういう青春ドラマみたいなセリフは嫌いだ。
私の性格と合っていないって言うか……なんか気持ち悪いから。
「留美子らしくないよね。自分が悪くても、絶対に謝らなかったのに。でも、私も言いすぎたかも」
……あれ? 私、謝ったっけ?