何かが滴り落ちるような音は、私にも聞こえた。
それが何なのか……まったく分からないけど。
「赤い人が来てるの? じゃあ……小野山さんは?」
あゆみのその問いに対する答えを、私も美雪も持ち合わせていない。
でも、こういう時は、音の発生源の正体がはっきりするまで、隠れている方が良い。
良いのか悪いのか、私達全員赤い人を見ているのだから、今さらその姿を確認したところで、マイナス要素はないのだから。
なんて、美雪ならそれくらい言いそうだなと思いながら、私は廊下の様子をうかがった。
何かが滴り落ちる音と、ニチャニチャという、ヌメっているような音が……近くまで迫っていた。
どこだろう……すぐ近く、階段の方から聞こえる気がするけど、まだその姿は見えない。
知らず知らずのうちに、身を乗り出して廊下を確認していた私を、美雪が腕をつかんで制する。
「留美子、少し下がって」
「分かってる……けど、もう少しで見えそう」
校内放送がまだ流れていないから、赤い人ではないと思いたい。
思いたいけど、校舎の外側を移動されている可能性もあるから安心はできないのだ。
美雪の指示に従いながらも、廊下を見る。
すると……。