「な、な、何なのよ!? その子供は!!」


逃げろと言われてもここは廊下の突き当たりで、外に出るためのドアは開かないし、教室に駆け込む余裕もない。


「助け……」


あゆみが私に手を伸ばし、助けを求めたその瞬間……少女の手があゆみの頭部に触れて、それに弾かれるようにあゆみの身体が私の方に飛んで来た。


「ひゃっ!!」


すさまじい勢いで飛んで来たあゆみは、私の横を通り過ぎて背後のドアにぶつかり、グチャッという不気味な音を立てた。


辺りに飛び散るぬるぬるとした液体……。


それにまみれた私は腰を抜かし、天井を歩いてくる少女を見つめる事しかできなかった。


「あ……ああ……」


消化設備の赤い光のせいか、それとも本当に赤いのか、天井を歩く少女はまさしく赤い人。


ドサリと、天井から床へと足場を移し、私の前に立った赤い人は……不気味に微笑んで腕を振り上げたのだ。











「キャハハハハハハッ!」










その笑い声が、最後に聞こえた。


私は激しく床に頭を叩き付けられて、何も分からないまま赤い人に殺された。