一歩、また一歩と机の上を歩く。
「美子、イタズラは大概にしなさい」
そう言って近づく美紗に、赤い人の表情が変わる。
「お姉ちゃん嫌い! あっち行け!」
怒りに満ちた表情で、美紗に腕を振り下ろした。
これが私だったら、避ける間もなく殺されている。
だけど、美紗は違った。
その動きを読んでいたかのように腕を避け、それをつかんで教室の後ろに放り投げたのだ。
「何してるの! 早く行きなさい!」
そう言われても……赤い人の恐怖もあるけど、美紗の予想外の動きに圧倒されて、私達は逃げるのを忘れていた。
美紗の言葉で、ハッと我に返ったのは美雪だった。
「ふ、ふたりとも、振り返らずに教室から出よう!」
グイッと腕をつかまれて、後ろ向きに入り口へと移動する。
その間にも、赤い人の攻撃を美紗が避け続けていて、さながらアクション映画のようだ。
飛びかかる赤い人を机に叩き付けたり、机の上に立つ赤い人の足を払って転ばしたり。
そして、私達が廊下に出た時、赤い人が教室のガラスを突き破り、廊下に飛び出して来た。