でも、美紗がいくらそう思っていても、簡単に聞けるはずもなくて。


チラチラとお互いに視線を送るだけで、会話にはならない。


「……はぁ。まあ良いわ。とにかくここを出ましょう。いつ赤い人が三階にやって来るか分からな……」


と、美紗がそこまで言った時、それが私の視界に飛び込んだ。


窓の外から射し込む月の光の中に、何者かの人影。


「あっ!」


そう私が声を上げ、その影を指差すと、皆もそちらに顔を向けた。












窓を見なくても分かる。










そこにいるのは……赤い人!


中からじゃない、外を通って三階に来ていたんだ。


「皆! 逃げなさい!」


誰よりも早く、美紗が声を上げた。


こんな時、どうして人は命令通りの行動を取らないのだろう。


どうして、見てはいけないと分かってるのに、その方向を向くのだろう。


逃げなきゃいけないって分かってるのに、私達は一斉に窓の方を見て……。


「いっぱいいたぁ!!」


窓に貼り付いて不気味に笑う赤い人が、私達を見てそう叫んだのだ。


次の瞬間、私達に襲いかかるガラスの破片。


赤い人がガラスを割り、室内に侵入したのだという事を、迫るガラスを見つめながら私は理解した。