グランドピアノと机しか置かれていないこの部屋を、調べるのなんて簡単だ。


そう思ってグランドピアノに向かって歩き始めた時だった。











『赤い人が、生産棟二階東側廊下を落下中です。皆さん気を付けてください』











いつもとは違う、奇妙な校内放送が流れた。


その校内放送に、私とあゆみは顔を見合わせた。


「今の……何? 落下中ってどういう事よ?」


そうか、あゆみは知らないんだ。


私は中庭側の外壁を、赤い人が歩いていたのを知ってるけど。


「ほ、ほら、初日にあゆみは赤い人に追いかけられたっしょ? その時、天井歩いてたじゃない?」


「え? あ……うん」


「赤い人にしてみれば、壁も天井も、単なる足場にすぎないって事じゃない? 美紗も不完全なカラダ探しだって言ってたしさ」


何の説明にもなっていないけど、こうとしか言いようがない。


難しい話は私は苦手だし、人に伝えるなんてもっと苦手だから。


「つまり……こう、学校を縦にした感覚なのかな。だから、赤い人は落下してるんだね」