そうだと分かったのは、あるはずの首がなくて……そこから出た血が、大きな赤い水溜まりを作っていたから。
「だ、誰……って、健司の? えっ、えっ? ここから、どうやってあの壁に……」
あゆみは混乱してるみたいだけど、何を言いたいのか、少しは分かる気がする。
赤い人が健司を殺して、その首を投げたとは思えない。
あれは……死んだ人には興味を示さないと思うから。
だからこそ、なぜ健司の頭部と胴体がこんな離れた位置にあるのかが分からないのだ。
「あゆみっ! しっかりしなよ! とりあえず、落ち着くために教室に入るよ!」
こんな時ばかりは、深く考えないタイプで良かったと思える。
潰れた頭と比べたら、首のない身体は気持ち悪いうちには入らない。
私はあゆみの手を取り、健司の死体の横を通って教室の中に駆け込んだ。
まだ混乱している様子のあゆみを椅子に座らせて、私もその隣に座った。
さっきまで、あゆみが私を支えてくれたように、私もあゆみを支えようと。
『赤い人が、体育館に現れました。皆さん気を付けて下さい』
『赤い人が、東棟二階に現れました。皆さん気を付けて下さい』