隣の教室で休憩するつもりだったけど、膝の震えもなくなり、ひとりで歩けるようになったから、その必要もなくなった。
「ねぇ、留美子。ここにもまだ血が付いてる……おかしいよ」
廊下の壁を見ていたあゆみが、不思議そうに呟く。
私には何がおかしいのかさっぱり分からない。
「何がおかしいのさ? 赤い人に殺されたってだけじゃないの?」
「そうなんだけど……廊下の一番奥まで続いてるんだよ? 何十メートルもあるのに」
健司の頭部が貼り付いていた場所は階段の前。
確かに、考えてみると今までの赤い人の殺し方とは違うような気がする。
初日にあゆみが吹っ飛ばされた時だって、身体全体が壁に叩き付けられていたのに。
赤い人にはまだ、私達の知らない秘密があるのかな。
「今は考えても仕方ないよ。また、朝起きたら考えようよ。明日は日曜だしさ」
そう言いながら、隣の教室に向かおうと、廊下の奥に携帯電話を向けた時だった。
「ひっ……ひやああああっ!!」
私は、その光景を理解すると同時に、悲鳴を上げた。
「な、何……ひ、ひいっ!」
あゆみも、私が見た物を目にしたのだろう。
教室の方を照らしていたら分からない、窓際に転がっている死体。