生産棟に入ると、さらにはっきり感じるようになった。
と、同時に階段の方からかすかに聞こえるあの声。
「……っかにそめあげて~」
まだ遠いけど、確実に聞こえるこの声が、奇妙な雰囲気の原因なのだろう。
「足音立てないように……静かに行くよ」
聞き取れるかどうかという程の小さな声でふたりに呼びかけると、うなずいて私に答える。
歌声に気付いているのだろう。
工業棟に行くには、歌が聞こえる階段の前を通り過ぎなければならない。
カラダ探しが始まってすぐに、赤い人に見つかるわけにはいかないから、嫌でも慎重になってしまう。
そっと……ピリピリと張り詰めた空気の中を、足音ひとつ立てずに歩く。
こういう状況になると、ついつい逆の行動を取って、空気を壊したくなる衝動にかられるけど……さすがに今、するわけにはいかないよね。
そんな事をすれば、私だけじゃなく、ふたりにまで迷惑がかかるから。
「……してどうしてあかくなる~」
さっきよりも声が遠くなってる。