生産棟の三階にいるのなら、昨日みたいな事にならないように、廊下の窓際に気を付けなければならない。
「生産棟の二階に行くって言ったけどさ、工業棟に行った方が安全かな? ほら、真上の階に赤い人がいるって考えると……ちょっとね」
「工業棟かあ……追い詰められると逃げ道がないけど、大丈夫かな?」
私もあゆみも、決断力がないよね。
命がかかっているとなると、責任を負いたくないから決断したくないだけかもしれないけど。
「階段でブツブツ言ってても仕方ないだろ? 危ないと思うなら、工業棟に行けばいいじゃねぇか。よし、決定!」
これも高広さんの効果かな? 今日の龍平は、いつもと違って男らしい。
……ウザいくらいに。
でも、今の私達にとってはその男らしさはありがたい。
責任を負いたくないという事もあるけど、決断力がない人しかいなかったから。
「龍平の言う通りにしようか。悩んでても仕方ないしね」
西棟の階段から廊下に出て、生産棟に続く渡り廊下に足を踏み入れた。
一歩一歩、足を踏み出すたびに感じる奇妙な雰囲気。
気のせいかなと首を傾げても、それを確かに感じるのだ。