「え? な、何これ……」


男性の呪文のような言葉に答えるように、部屋の天井付近に奇妙な渦が現れたのだ。


良く見ると、壷から立ち上った煙のような物が天井付近で渦になっていて。


黒く、嫌な感じがする渦の中心から、細い筋がゆっくりと赤い人に向かって降りてくる。


もしかして……美紗が言っていたように、悪霊が赤い人の中に入ろうとしてるの?


「あ、あのさ、お取り込み中のところ悪いけど、そろそろやめた方が良いと思うよ。マジでヤバい事になってるから……」


何を言っても男性はやめない。


そんな事を言ってる間にも、渦から伸びた筋の先端が赤い人に到達する。


閉じられた口や鼻からそれが侵入して、黒い渦が徐々に小さくなって行く。


男性のおかしな行動が、こんなモノを引き寄せてしまって、赤い人を化け物にしてしまったんだと、改めて理解した。


そして、天井の黒い渦が完全になくなり、そのすべてが赤い人の中に入った時、男性の声が止まった。


やっと諦めたのかな?