私が話した時は、あまり信じてもいなかったようだけど、美紗の話は妙な説得力がある。


それはつまり、あゆみも龍平も誰かを犠牲にして、この世界を続ける選択をするかもしれないという事。


「まあ……話が良く分からなかったけどよ。龍平、男なら見返りのためじゃなくて、自分がやるべき事のために動け。俺も武司も、お前にそんな情けねぇ事は教えてなかったはずだぞ」


落ち込む龍平の肩にポンッと手を置いて、高広さんが言った。


龍平が、高広さんと武司さんと一緒にいた事は知ってる。


だけど、何をしていたかなんて知らないし、今初めて高広さんが先輩らしい事を言ったという印象だ。


「分かってるっすよ! 分かってるけど……カラダ探しを終わらせたら、俺はいなくなっちゃうんすよ!? 高広さんが俺の立場なら、本当にそんな事言えるんすか!?」


常日頃から、龍平は高広さんを尊敬していると言っていた。


そんな高広さんに対して、ここまで言うなんて……相当悩んでるんだろうな。


「……分からねぇ。格好つけて、言えるなんて言わねぇよ。だけど、もしも俺が犠牲になる事で皆が助かるなら、俺は自分のやる事をやるだけだ」


今の言葉で、明日香さんの顔が思い浮かんだ。