「うれしいわ、友達と食事なんて。こっちに来るまで友達なんていなかったから」
美紗のその言葉を聞いて、私は何も言えなくなった。
元の世界の話も聞きたいけど、美紗のちょっぴりうれしそうな顔を見たら、それを壊すのもどうかと思ったから。
美紗の家を出て、雨の中を歩いて近くのファストフード店にやって来た私達。
高広さんの財布事情から、たいしたものはおごれないという事で。
「お前らさ、危ない事に首を突っ込んでるんじゃないのか? 何かあったら俺か、近くにいる武司にでも言えよな」
注文を終え、テーブルに着いた私達の顔を見て、高広さんが心配そうに言った。
危ない事にって……こればっかりは誰に言ってもどうにもならないんだよね。
高広さんや武司さんに言ったところで、私達のカラダ探しが終わるはずもないし。
「優しいのね、伊勢君。でも、それは私達の問題よ。今のあなたには何もできないわ」
冷たい眼差しを高広さんに向けながら、美紗が呟く。
「いや、そうかもしれないけどよ、話せば気が楽になる事もあるだろ? だから……」
「何もないわ。言っても、この状況は変わらない」
とりつく島もないと言った感じで、高広さんの言葉をはねのける。