何かを思い付いたようにあゆみが口を開き、それを聞いていた高広さんが倉庫の中に入って行った。


こういう時の、恐れを知らない高広さんの行動力は頼りになる。


「お前ら、ごちゃごちゃ言ってないで動け。……なるほどな。床に何かを引きずったような跡があるぜ。これは……この棚は、最初からここに置かれてたわけじゃねぇな」


近寄って見てみると、高広さんの言うように、棚の前の床だけ、こすれたような跡があったのだ。


「つまり……この棚は、後でここに置かれたって事?」


「たぶんそうじゃねぇの? ここは倉庫じゃなくて、通路みたいな感じもするしな」


高広さんに言われて、部屋の中を見回してみると、確かにそれっぽくも見える。


「伊勢君、その棚を動かせるかしら?」


美紗に促されて高広さんが棚に手をかけ、力を込めると、ズズッと床を擦る音を立てながら棚が動き始めた。


思ったより重いのか、ひとりで動かすのはかなり厳しそうだ。


「龍平、手を貸してくれ! 結構重いわ」


「は、はいっす! 任せてください!」


龍平も加わり、ふたりがかりで移動させた大きな棚。


それが部屋の奥の壁から離れて……私達の目の前に、頑丈そうなドアが現れたのだ。