「赤い人はね、昔、レイプされてバラバラにされた女の子なの」


美紗がそう言ったとたん、龍平の顔付きが変わった。


いつものとぼけたような表情とは違う……。


今までに何度か見た事がある、その真面目な表情。










そうだ、授業中にトイレを我慢している時の顔だ。


しかも大。


「女の子の母親は、それは悲しんだわ。でも、それ以上に悲しんだのは父親だったの」


龍平の我慢を無視して、美紗の話は進む。


「バラバラになったカラダを集めて、なんとか人の形に戻した父親は、女の子を生き返らせようとしたの」


……こんな話を、関係のない高広さんに聞かせても大丈夫なのかな。


高広さんまでカラダ探しに巻き込まれてしまうなんて事はないよね?


「そのために、父親はいろんな文献を引っ張り出して、できる事は何でも試したの。道術、陰陽術、果ては魔術と呼ばれるものまでね」


「なんかとんでもねぇ話だな。でも、良く知ってんな、お前」


話の途中で、高広さんが笑いながら美紗をほめる。


この人、これが作り話だとか思ってるんだろうなあ。


龍平でさえ、トイレを我慢してる時と同じ、真面目な顔で話を聞いてるのに。