昨日の夜、美紗の家に行けとは言ったけど……まさかこんな朝早くに来てるなんて、どういう神経してるんだか。


「龍平! あんた何してんのよ!」


その言葉に驚いたのか、ドアの隙間に近づけていた顔を離し、慌てて振り返る龍平。


勝手に入ろうとしていたのか、動揺を隠せない様子で私達に目を向けて……満面の作り笑いを浮かべていた。


「な、なんだよ、美紗ちゃん出かけてたのか。返事がないからつい……」


「返事がないから寝てると思って、どうにかして中に入って寝込みを襲おうとしたんでしょ。変態め」


昨日、私とやりたいとか言ってたくせに、本当に誰でも良いのかこいつは。


「ん? お、おおっ! 龍平じゃねぇか! ……龍平だよな?」


高広さんの顔が、一瞬パアッと明るくなったかと思うと、次の瞬間、首を傾げて微妙な表情に変わる。


もしかして、龍平の顔を忘れたとか?
高広さん、バカだからありえなくもないよね。


「た、た、高広さんじゃないっすかぁ! 会いたかったっす! マジで!」


ああ、そう言えば龍平は高広さんと武司さんの舎弟だったな。


恐怖で支配していた武司さんと違って、高広さんは龍平の面倒を良く見てたし。