事情を知らなければ、仲の良いカップルが寄り添って歩いていると思ってしまいそうなふたりの後ろ姿に、うんざりしながら私は歩いた。
それから歩く事10分。
鬱蒼と生い茂る草を分け行った先にある、見た目は廃屋の美紗の家に到着した。
「なんかすげぇとこだな。家もボロッボロじゃねぇかよ。ここに住んでんのか?」
眼前にそびえる廃屋に目をやり、その中を想像しているのだろう。
高広さんの顔が、引きつったものへと変わる。
「それがさー、こう見えて中はピッカピカなんだって。見たらきっとビックリするよ?」
先に進むのをためらっている様子の高広さんの背中をバンッと叩き、ツカツカと家に向かっている美紗の後を追う。
すると……。
玄関の前で、ジャージ姿の男が、中の様子をうかがうようにコソコソとうごめいているのが目に入った。
「あら、お客さんみたいね? 泥棒かしら?」
「あんたの頭の中、どうなってんのよ。私だったらこんな廃屋に金目の物があるとは思わないんだけど……あの後ろ姿は、間違いなくあいつでしょ」